そもそも在職老齢年金とは
厚生年金に加入したまま働くとき、「老齢厚生年金の月額(=基本月額)」と「総報酬月額相当額(※)」の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になる仕組みです。
※総報酬月額相当額=「標準報酬月額」+「その月を含む直近1年の賞与総額÷12」。手取りや実支給額ではなく“標準報酬”で判定します。日本年金機構が計算式を公表しています。
2025年度まで(現行)の基準(65歳以上)
* 2025年度(令和7年度)の支給停止調整額(判定ライン)は月51万円。
計算は
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)×1/2(停止額の上限は基本月額)。
2026年度(令和8年度)からの改正ポイント
厚生労働省の年金制度改正で、65歳以上の支給停止調整額が「月62万円」に引き上げられます(2024年物価水準ベース)。さらに、この基準額は今後、経済動向に応じて毎年度改定される設計です。施行は2026年4月。
要は:2026年度からは、「老齢厚生年金(基本月額)+総報酬月額相当額」=月62万円までは減額なし。
62万円を超えた部分の半分が支給停止になります(停止の上限は基本月額)。
具体例でのイメージ
(すべて65歳以上、2026年度の「62万円基準」を使用)
1. 月給のめやすが30万円、賞与なし、老齢厚生年金が月10万円
合計=10万+30万=40万円→62万円未満なので満額支給。
2. 月給45万円、賞与なし、年金12万円
合計=12万+45万=57万円→満額支給。
3. 月給55万円、賞与なし、年金12万円
合計=12万+55万=67万円(基準超え5万円)
停止額=(67万-62万)×1/2=2.5万円→支給は12万-2.5万=9.5万円。
4. 「どこから“全額停止”?」
総報酬月額相当額 ≥ 62万円+年金(基本月額) となると停止額が基本月額に達し、全額停止になります。
例)年金12万円なら、総報酬月額相当額が74万円以上で全額停止のラインに到達。
※総報酬月額相当額には「標準報酬月額」と「賞与÷12」が入る点にご注意(実際の給与総額とはズレます)。
65歳以上の平均給与はいくら?
厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和6年=2024年実施)」の一般労働者・男女計では、65~69歳の所定内給与額の平均は約27.5万円/月です(企業規模計、所定内=超過労働を除く月例部分)。この水準だと、多くの方は62万円基準の枠内に収まりやすく、支給停止にならないケースが増えると考えられます。
参考:同調査の年齢別賃金は毎年公表され、都道府県・規模別もe-Stat(政府統計の総合窓口)で確認できます。

シニア
2026年度改正のねらいと影響
* 働く意欲への配慮:高齢就業者の賃金上昇や人手不足のなか、年金減額の“壁”を上げて就労継続を後押し。
* 制度のわかりやすさ:ラインを62万円に明確化、毎年度改定で実勢に合わせる。
* 家計への影響:平均的な賃金帯(25~30万円台)+年金の合計では、多くが支給停止なしに。一方、高収入+高年金の人は依然として停止調整の対象です。
自分は該当する?チェックのしかた(簡易)
1. 年金振込額ではなく「老齢厚生年金の基本月額」を確認(加給・繰上げ繰下げ等は別途影響)。
2. 会社の標準報酬月額と直近1年の賞与総額を把握(「賞与÷12」を足す)。
3. 基本月額+標準報酬月額+賞与÷12が
– 2025年度:51万円以下→ 停止なし(現行)。
– 2026年度以降:62万円以下 → 停止なし(改正後)。
よくある勘違い
* 「手取りや支給明細の総額で判定」→ ×。標準報酬がベース。
* 「62万円はずっと固定」→ ×。毎年度の経済動向で改定されます。
* 「65歳未満も同じ基準」→ ×。60~64歳の仕組みは別枠(別の基準額と計算式)。本記事は65歳以上が対象です。
まとめ
* 2026年度(令和8年度)から、65歳以上の在職老齢年金の支給停止判定ラインが62万円へ引き上げ。以後は毎年度改定。
* 2025年度までは51万円(現行)。
* 65~69歳の平均所定内給与は約27.5万円/月(一般労働者・男女計、令和6年調査)。基準引き上げにより、平均的な賃金帯では減額なしの人が増える見込み。
制度は毎年度の告示で数値が動く可能性があります。実際の試算や手続きは、日本年金機構の最新ページや年金事務所で必ずご確認ください。


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