シニアライフ~老夫婦の小さな旅と家族の心に残るモニュメントバレーの夕焼け

シニアライフ

65歳を過ぎると、介護保険料の負担がずしりと重く感じられるようになった。
フルタイムで働きながら年金を受け取る生活は続いているが、築33年の一戸建てはあちこち修理が必要で、
エアコンの買い替えやクリーニングなど、出費は途切れることがない。
それでも、家を守りながら暮らしていく日々には、どこか愛着がある。

そんな生活の合間に、昨年は思い切ってオーストラリアへ旅に出た。

ゴールドコーストの海は陽光を跳ね返し、シドニーの街は活気に満ちていた。
夫婦ふたりで歩く海外の街並みは、若い頃とは違う落ち着いた楽しさがあった。

思い返せば、子どもたちが小さかった頃は、家族で大きな旅をしたものだ。
フロリダのディズニーワールドでは笑い声が絶えず、
ワシントンやニューヨークでは歴史と都会の空気を吸い込み、
ナイアガラの滝の轟音に圧倒され、
グランドキャニオンやモニュメントバレーではレンタカーで広大な大地を走り抜けた。
あの頃の旅は、家族の成長とともに刻まれた宝物のような思い出だ。

にぎやかだった家が静けさを取り戻した代わりに、
夫婦で年に数回のささやかな旅を楽しむ時間が増えた。
大きな冒険ではなくてもいい。
季節ごとに少し遠くへ出かけ、知らない景色に触れるだけで心が満たされる。

これからも、家の修理をしながら働き、
その合間にふたりで小さな旅を続けていきたい。
人生の後半は、ゆっくり歩く旅のように進んでいくのだと感じている。

子どもたちの声が響いた、砂漠の雷鳴の夜

夕焼けがモニュメントバレーの岩肌を真っ赤に染め上げたとき、
子どもたちは興奮して走り回っていた。

「見て!岩が燃えてるみたい!」
「写真撮ろうよ!」

夕陽の赤が子どもたちの頬まで照らし、
その姿はまるで映画のワンシーンのようだった。
家族で撮った一枚は、今でもアルバムの中で特別な存在だ。

日が沈むと、子どもたちのテンションはさらに上がった

太陽が完全に沈むと、砂漠は一瞬で漆黒の世界に変わった。
街灯も家もない、ただ大地と空だけの夜。

その静寂を破るように、遠くで雷鳴が響いた。

「うわっ!今の聞いた?」
「雷だよ!絶対近づいてる!」

子どもたちは怖がるどころか、
まるで冒険映画の主人公になったかのように騒ぎ始めた。

稲妻が地平線を切り裂くたびに、
「光った!光った!」
と窓に顔を押しつけ、
妻は「やめてよ、落ちるわよ」と笑いながら肩をすくめた。

車内は“雷鳴のテーマパーク”と化した

レンタカーを走らせると、砂が車体にバラバラと当たり、
風が車を揺らすたびに子どもたちは大騒ぎ。

「怪物が追いかけてるみたい!」
「雷が車を狙ってるよ!」

妻は苦笑しながらも、
「あなたたち、本当に怖くないの?」
と呆れたように笑っていた。

私はハンドルを握りながら、
暗闇の中で響く子どもたちの声に救われていた。
雷鳴の迫力よりも、
家族で旅をしているという実感のほうが強かった。

宿の灯りが見えた瞬間、車内は歓声に包まれた
50キロ先の宿の灯りが見えたとき、
子どもたちは一斉に叫んだ。

「着いた!着いた!」
「雷に勝ったね!」

部屋に入ると、
子どもたちはベッドに飛び込みながら
「今日すごかったね!」
と口々に話し、
妻は窓の外を見て
「雷、まだ鳴ってるね」
と静かに言った。

その横顔を見ながら私は思った。
この旅は、一生忘れない。

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